2025年1月に夫婦でエジプト旅行へ行ってきました。本記事では、王家の谷の入場料や見どころなどを解説します。
王家の谷
王家の谷の概要
王家の谷とは、エルクルン山の麓に建設された新王国時代の王墓の総称です。東の谷と西の谷に分かれています。
最初に埋葬されたのはトトメス1世です。王家の谷は、トトメス1世または娘ハトシェプスト女王によって築かれたのが始まりと考えられています。

中王国時代のピラミッドとは対照的に目立たない立地ですが、墓地であることは周知の事実となり、多くの王墓が盗掘されました。
現在も修復作業が行われており、見学できる王墓は日によって異なります。優先順位を付けて、候補地を複数まとめておくと安心です。
《王家の谷》王墓一覧
番号 | 王朝 | 王墓 | 場所 |
---|---|---|---|
KV38 | 第18王朝 | トトメス1世 | 東の谷 (非公開) |
KV20 | 第18王朝 | トトメス1世 ハトシェプスト | 東の谷 (非公開) |
KV34 | 第18王朝 | トトメス3世 | 東の谷 (見学可能) |
KV35 | 第18王朝 | アメンへテプ2世 | 東の谷 (非公開) |
KV43 | 第18王朝 | トトメス4世 | 東の谷 (見学可能) |
KV22 | 第18王朝 | アメンへテプ3世 | 西の谷 (非公開) |
KV55 | 第18王朝 | アメンへテプ4世 (アクエンアテン) | 東の谷 (非公開) |
KV62 | 第18王朝 | ツタンカーメン | 東の谷 (追加チケット) |
KV23 | 第18王朝 | アイ | 西の谷 (追加チケット) |
KV57 | 第18王朝 | ホルエムヘブ | 東の谷 (非公開) |
KV16 | 第19王朝 | ラメセス1世 | 東の谷 (見学可能) |
KV17 | 第19王朝 | セティ1世 | 東の谷 (追加チケット) |
KV7 | 第19王朝 | ラメセス2世 | 東の谷 (修復中) |
KV8 | 第19王朝 | メルエンプタハ | 東の谷 |
KV10 | 第19王朝 | アメンメセス | 東の谷 (修復中) |
KV15 | 第19王朝 | セティ2世 | 東の谷 (見学可能) |
KV47 | 第19王朝 | サプタハ | 東の谷 (見学可能) |
KV14 | 第19王朝 第20王朝 | タウセルト セトナクト | 東の谷 (見学可能) |
KV11 | 第20王朝 | ラメセス3世 | 東の谷 (見学可能) |
KV2 | 第20王朝 | ラメセス4世 | 東の谷 (見学可能) |
KV9 | 第20王朝 | ラメセス5世 ラメセス6世 | 東の谷 (追加チケット) |
KV1 | 第20王朝 | ラメセス7世 | 東の谷 (見学可能) |
KV6 | 第20王朝 | ラメセス9世 | 東の谷 (見学可能) |
KV18 | 第20王朝 | ラメセス10世 | 東の谷 (非公開) |
KV4 | 第20王朝 | ラメセス11世 | 東の谷 (非公開) |
アクセス方法
王家の谷は、ルクソール国際空港から車でアクセスすることができます。所要時間は約20分です。
私たちはトリップアドバイザーの子会社Viatorのルクソール西岸ツアー(貸切チャーター)を利用してアクセスしました。
ツアー内容 | 料金 | (ご参考)私たちの場合 |
---|---|---|
ホテル⇄観光地5カ所の往復 (各施設内は個人で見学) | 1人当たり20米ドル (約3,000円) | ○Viatorで予約 |
流れタクシーを1日チャーターする方法もありますが、料金交渉やトラブルを避けたかったため、ツアーを予約しました。安心して利用できました。
入場料
王家の谷の入場チケットは、窓口またはオンラインで購入することができます。チケット売り場は、ビジターセンターの中にありました。


ご参考までに、私たちはオンラインでチケットを購入しました。窓口に並ぶ必要がなく、時間の節約に繋がりました。
オンラインチケットの購入はこちら
エジプト考古省公式サイト
<https://egymonuments.com/details/ValleyOfKings>
入場チケットを購入すると、当日公開されている王墓(追加チケットの王墓を除く)のうち3カ所を自由に選んで、見学することができます。
アイ・セティ1世・ツタンカーメン王・ラメセス5〜6世の墓を見学したい場合は、追加チケットが必要となるためご注意ください。
チケットの種類 | 料金 | (ご参考)私たちの場合 |
---|---|---|
入場チケット (必須) | 750エジプトポンド (約2,250円) | ○オンライン購入 |
アイの墓 (オプション) | 200エジプトポンド (約600円) | – |
セティ1世の墓 (オプション) | 2,000エジプトポンド (約6,000円) | ○オンライン購入 |
ツタンカーメン王の墓 (オプション) | 700エジプトポンド (約2,100円) | ○オンライン購入 |
ラメセス5〜6世の墓 (オプション) | 220エジプトポンド (約660円) | ○オンライン購入 |
王家の谷は東の谷と西の谷に分かれていますが、ほとんどの王墓が東の谷にあります。東の谷は、ビジターセンターから徒歩5分程度の距離です。
歩くこともできますが、ほとんどの観光客が電動カートに乗って移動していました。電動カートのチケットブースは屋外にありました。
電動カート | 料金 |
---|---|
往復チケット ビジターセンター⇄王家の谷(東の谷) | 20エジプトポンド (約60円) |


短い距離ですが、あっという間に移動できて便利でした!しかし、混雑時は待ち時間が発生するため、歩いた方が早いかもしれません。
見学した王墓
私たちは約2時間かけて、東の谷にある王墓5基を見学しました。


特におすすめしたいのは、セティ1世・ツタンカーメン王・ラメセス5〜6世の墓です。追加チケットが必要ですが、満足度が高かったです!
本来はもう1カ所見学できますが、時間が足りなくなってしまい、見送りました。再訪する機会があれば、半日かけてじっくり見学したいです。
セティ1世の墓(追加チケット)
はじめにセティ1世の墓を見学しました。セティ1世は、古代エジプトで最も偉大な王と称されるラメセス2世の父親です。
セティ1世の墓は長さ137メートル、深さ100メートルあり、王家の谷にある王墓の中で最大の規模を誇ります。

セティ1世の墓は、追加チケットが必要となるためご注意ください。入口で追加チケットを提示して、お墓の中に入りました。

最初に第1通路を見学しました。壁面に太陽神ラーの賛歌が描かれています。

(左下)セティ1世が太陽神ラー・ホルアクティに挨拶する様子
(右下)太陽円盤:ケプリ神と羊頭の太陽神

(左下)正義の女神であるマアト神
(右下)太陽神が様々な姿に変容=冥界を旅する様子
次に第2通路を見学しました。壁面に『冥界の書』の4〜5時間目が描かれています。

『冥界の書』4時間目について描かれている
長い通路を抜けると、盗掘や浸水を防ぐために作られたシャフト(深い井戸)が現れました。冥界における難所を想起させる場所です。

(右上)セティ1世が神々に挨拶する様子
シャフトの先には、第1列柱室がありました。壁面に『門の書』が描かれています。

(左)セティ1世が神々と対面する様子
(右)『門の書』5番目の門について描かれている
奥には未完成の部屋があり、レリーフを彫る前の下書きが残っていました。制作過程を垣間見ることができて、非常に興味深かったです!

『冥界の書』9〜11時間目について描かれている
玄室に続く通路の壁面には、口開けの儀式が描かれています。

口開けの儀式が描かれている
最奥部にセティ1世の玄室がありました。玄室で発見された石棺は、現在イギリスのサー・ジョン・ソーンズ美術館に展示されています。
黄金に輝く玄室は神々しく、まるで異世界にいるような感覚を味わいました!壁画の保存状態は良好で、非常に美しかったです。

『冥界の書』12〜13時間目について描かれている

『冥界の書』1時間目について描かれている

天体図(天空の星と星座)が描かれている

玄室から延びているが未完成となっている
セティ1世の墓のチケットは、王家の谷の中で最も高額なため躊躇しましたが、見どころが多く、思い切って購入してよかったです!
ツタンカーメン王の墓(追加チケット)
続いてツタンカーメン王の墓を見学しました。ツタンカーメン王はわずか9歳で即位し、19歳の若さで亡くなったファラオです。
ツタンカーメン王の墓は小規模ですが、盗掘の被害をあまり受けておらず、黄金のマスクをはじめとする副葬品が5000点以上、発見されています。

ツタンカーメン王の墓は、追加チケットが必要となるためご注意ください。入口で追加チケットを提示します。
お墓に入った直後は、見学者が多く混雑していましたが、狭くて回転も速いため、後半はゆっくり見学できました。

最初に前室を見学しました。前室には装飾がなく、ツタンカーメン王のミイラが展示されていました。
黒く変色しているのは、ミイラ作りの際に、肌に塗られた亜麻仁油が自然発火したためと考えられています。

次に玄室を見学しました。中央には石棺が置かれています。ツタンカーメン王のミイラは、厳重に保管されていたそうです。
人型棺と厨子は、カイロ(エジプト考古学博物館・大エジプト博物館)で展示されています。

ツタンカーメン王の墓はシンプルな造りとなっていますが、可愛らしい壁画が残っており、やはり外せない王墓の一つだと思います!

(右上)口開けの儀式が描かれている
(左下)永遠の命を授かるツタンカーメン王の姿
(右下)『冥界の書』1時間目について描かれている

ツタンカーメン王の棺が運ばれる様子
ラメセス5〜6世の墓(追加チケット)
続いてラメセス5〜6世の墓を見学しました。元々はラメセス5世のために作られましたが、ラメセス6世によって改装・流用されました。
ラメセス5〜6世の治世は短く、国力も衰えていましたが、最盛期に引けを取らない、美しい壁画が残されています。

ラメセス5〜6世の墓は、追加チケットが必要となるためご注意ください。入口で追加チケットを提示して、お墓の中に入りました。

まず第1〜3通路を見学しました。北側に『洞窟の書(太陽神が冥界の洞窟を巡る旅)』、南側に『門の書』、天井に天体図が描かれています。
内部では、たまたま修復作業が行われており、興味深く拝見しました!レリーフに付着していた砂埃をブラシで優しく取り除いていました。

長い通路の先に、色鮮やかな第1列柱室がありました。第1列柱室から続く通路には『冥界の書』が描かれています。


最奥部にラメセス6世の玄室がありました。ラメセス6世の石棺は、粉々に破壊された状態でしたが、修復により蘇っています。

壁面には『大地の書(太陽神が大地を通過して再生する旅)』が描かれています。大きな太陽円盤がひときわ目を引きました!

天井には、ヌト神(天空の女神)が描かれています。太陽と星の動きが表現されており、これまで見た天体図の中でも、群を抜いた美しさでした!

ラメセス王朝のうち、どの世代のお墓を見学するか迷っている方には、ラメセス5〜6世の墓を心からおすすめしたいです!
ラメセス9世の墓
続いてラメセス9世の墓を見学しました。ラメセス9世は、第20王朝のうちラメセス3世および11世に次いで、在位期間が長かったファラオです。

ラメセス9世の墓は、入場チケットで見学することができる王墓の一つです。入口で入場チケットを提示します。
私たちが訪問したタイミングは大混雑しており、驚きました…!ゆっくり見て回る余裕はなかったです。

内部には、色鮮やかな壁画が残っていました。新王国時代を象徴する、複数の葬祭文書から抜粋されたシーンが描かれています。

残念ながら、最奥部の玄室にはアクセスすることができませんでした。しかし、全体の保存状態が良好であるため、訪れる価値はあると思います!

トトメス4世の墓
最後にトトメス4世の墓を見学しました。トトメス4世は、エジプトの領土を最大に広げたトトメス3世の孫です。
本当はトトメス3世の墓を見学したかったのですが、道を間違えてしまい、引き返す時間の余裕もなかったので、そのまま見学しました。

トトメス4世の墓は、入場チケットで見学することができる王墓の一つです。入口で入場チケットを提示します。
私たちの他に見学者がいないタイミングで、行きと帰りにバクシーシ(心付け)を要求されましたが、スルーして問題なかったです。

トトメス4世の墓は傾斜が急であり、階段の上り下りが大変でした。長い通路を抜けると、盗掘や浸水を防ぐシャフト(井戸)が現れました。

永遠の命を授かるトトメス4世と神々の姿
シャフトの先には第1列柱室がありました。装飾が施されていないのは、トトメス4世が早くに亡くなったためと考えられています。

前室には、シャフトと同様の壁画がありました。トトメス4世の墓は盗掘されて、ホルエムヘブの治世に修復されたという記録も残っています。

最奥部にトトメス4世の玄室がありました。壁面に装飾はありませんでしたが、黄色珪岩でできた美しい石棺が置かれていました。

トトメス4世の墓は装飾の数は少ないものの、丁寧に切り出されていました。時間や体力に余裕のある方は訪れてみてはいかがでしょうか。
まとめ
本記事では、私たちが約2時間かけて、王家の谷を見学した時の様子をご紹介させていただきました。
王家の谷にある王墓は、眺めて回るだけでも興味深いですが、予備知識があるとさらに楽しめると思います!
今回は簡潔に説明したため、より詳しく知りたい方は、以下の参考文献から深掘りしてみてくださいね。
参考文献(タップして開く)
- 河江肖剰の古代エジプト
セティ1世王墓を大公開!巨大王墓に残された壁画と冥界の旅
<https://youtu.be/6qdL2ME0dqc?si=Y1olvLcAEygLziSw>
(2025年4月25日最終アクセス日) - 河江肖剰(2023)『古代エジプトの教科書』ナツメ社
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エジプト考古学者の監修本

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